コンピューターネットワーク

僕が経験した最初のパソコン通信は音響カプラという機械をパソコンに接続し、同じく音響カプラが接続された友達のパソコンと電話回線を経由して行ったものでした。半二重という形でしたが、なんとか双方向の通信ができていました(半角カタカナで「コンニチハ」って送って驚喜していました(笑))。データを音声に変換して電話回線に乗せ、着信した音声をデータに戻すという通信です。この少し前までデータを記憶する媒体(今はハードディスクが主流)はカセットテープでした。これもデータを音声に変えてカセットテープに“録音”していたわけですね。

その後パソコン通信が発展して、ホストサーバーにデムを使って(電話回線を使って)接続する形が一般的になりました。それまでは電話のように1対1で通信していたのが、どこかの会議室に集まってみんなでワイワイ話ができるようになったわけです。それはそれで楽しかったのですが、ホストサーバーがダウンしてしまうとだれとも通信できなくなってしまうというデメリットも存在していました。

さて、その後(1990年代に入って)インターネットが僕たちの手元に現れました。ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)という言葉(考え方)に象徴されるように、あるホストコンピューターにみんなが接続するのではなくそれぞれが蜘蛛の巣の形のように接続しているという仕組みが僕にとっては革命的でした。Mac(Macintosh SE/30など)を使っていましたのでAppleTalkで簡単にネットワークを作ることはできたのですが、それが世界規模で接続しあっている様に興奮したものです。

しかし、その後は(ホストコンピューターに接続するように)人気のあるウェブサーバ(ウェブサイト)にみんなが接続するという形に戻っていったのです。みんながテレビでフジテレビにアクセスする(チャンネルを合わせる)のと同じですね。誰かが「インターネットを見る」という表現を使っていてショックを受けたこともあります。コンテンツを受信することだけがインターネットに接続する目的になりつつあったのです。

個人的にはテレビ局やメジャーレコード会社のコンテンツ(番組やCDなど)に人が集まるのではなく、小さな単位(個人のパソコン)から発信されるコンテンツ(映像や写真やテキストなど)に人が集まるというWWWの形態に興奮していたので非常に残念でした。ジョン・レノンの歌う「POWER TO THE PEOPLE」の“POWER”をインターネットで得ることができたと思っていたのです。テレビやラジオ、紙媒体と違い、インターネットは受信だけではなく発信できることが革命的だったのです。なので、1994年にスタートさせたプロバイダー“KIWI internet”は“情報発信できること”を売りにしました。ユーザーに発信する楽しさを知ってほしかったので、発信するための環境を他のプロバイダーより充実させました。でも、我々の微力はなんの影響も効果もなく、世の中はインターネットで情報を“得ること”が中心になっていってしまったのです…。

しかし、やはりインターネットは既存メディアとは違っていました。ブログ(Weblog)の登場です。ブログを使えばそれまでの数倍も簡単にウェブページを作り、発信することができるようになったのです。ワープロで文章を書く感覚でウェブページを作成し、世界に発信できるようになったわけです。僕がこれに飛びついたのは2003年でした。自分の文章(日記でもなんでも)をインターネットを使って発信するためにはHTMLだかJava scriptだとか、そんなプログラムみたいなことを勉強しなければならない時代は終わったのです。

何十万もの人たちが待ってましたとばかりにブログを使い発信を始めました。新聞やテレビでは得られない情報がどんどん流れ始めました。すごく自由になりました。表現の自由。

ブログは今やマスコミと同じかそれ以上の力を持ち始めています。あるひとつのブログが力を持ち始めたのではなくて、ブログの集合体が力を持ち始めています。ブログを書いている人たちに商品を見せ、その評価を多くのブログに書いてもらうことで、テレビなどで広告を出すのと同じかそれ以上の効果が現れるようになってきたのです。

しかし、進化はまだ途中です。残念ながら現時点では多くの場合、結局のところウェブサーバというホストコンピューターのようなものが必要なのです。次のステップは、ワールド・ワイド・ウェブという考え方に再び戻ることです。

それはピア・ツー・ピア(Peer to Peer/P2P)のアップグレードです。

ピア・ツー・ピアというと、初期の頃はナプスターが有名でしたし、日本ではWinnyが(悪い意味でも)有名ですね。そういった初期型のP2Pではなく、もっとインテリジェントでセキュアーなP2P技術が革命を起こすでしょう。

近いところでは“BitTorrent”があります。完全にセキュアーとは言い切れませんが、大きな可能性を感じさせてくれます。日本ではまだまだユーザーは少ないのですが、世界的に見ると大きなトレンドを形成しています。

BitTorrent がこれまでのP2Pソフトウェアと大きく異なるのは、既存ソフト(Napster等)の法則に反して、「人気のあるファイルであればあるほど、ダウンロードが速くなる」という特徴である。それまでのP2Pソフトウェアの構図は、一極集中型であった。これは、限られた数の豊富な帯域を持っているユーザの周りに、帯域の貧弱な大量のユーザがぶら下がる構図である。このため、ある一つのファイルを取得するためにユーザが集まると、ダウンロード要求が一極集中し、全体の拡散速度としても豊富と言われた帯域を占有するだけの速度しか出すことが出来ない。この現象に対してBitTorrentでは、「相手(ピア)からファイルの一部を受けとるには、自分もファイルの一部を渡さなければならない」という規則を導入し、貧弱な帯域を持つユーザでも全体のファイル配布に協力できるようにした。これにより、人気のあるファイルに対する要求であっても、それだけ多くのユーザが配布に協力することになり、結果としてユーザ全体へ速く浸透することが出来る。(出典:Wikipedia)というのが特徴です。

インターネットがテレビやラジオといったメディアではなく、インターネットとしてその特徴を最大限に生かすためにはこのようなP2P技術のアップグレードが必要なのはいうまでもありません。またこれにより、ギブ(与える)だけ(テレビ局)とかテイク(受け取る)だけ(テレビ)ではなく、インターネットのとても大切な文化である“ギブ&テイク”という文化を存続させることができるようになるのも大切な特徴です。インターネットは特定の誰かのものではなく、みんなのものです。みんなでギブ&テイクしながら大切に守っていかなければなりません。そういう意味においても僕は一番最初のパソコン通信のようにP2Pに戻っていくことを願ってやみません。
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